「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ 内藤了

10月 体育の日を含む三連休 後半は天気もよく京都はすごい人出のようでしたね。

私はと言うと、日曜日にゴルフの練習とネットカフェに出かけたくらいで(この時に人での多さに驚かされたのです)あとはひたすら買い込んだ電子書籍を読みふけっていました。

まず手につけたのは、表題の通り

「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ

波瑠主演で最近ドラマ化されましたよね。

ドラマを見てこの作品を知ったわけです。

ST 警視庁科学特捜班』『SRO 警視庁広域捜査専任特別調査室』しかり、ドラマ化されるとなんだかなーな残念な感じになるのですが、「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」については、ドラマから入ったのでそれほど違和感なく、ドラマの藤堂比奈子のキャラクター設定(無感情のサイコパス)と波瑠のイメージが合っていてそれなりに楽しめました。

でも、原作を読むとやっぱり違和感がハンパない感じで、先にドラマを見ていてよかったかなと感じていたりします。(主演の波瑠しかり、佐藤都夜の佐々木希しかりかなり役者さんにキャラクターを寄せている感じ)

以下、若干のネタバレがあります。

「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズ一覧

「ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」は、第21回日本ホラー小説大賞読者賞受賞作品。

遺体に群がる虫や惨殺死体などグロテスクな表現が多く結構エグイのでそういうのが苦手な方にはおすすめできない作品ではありますが、川瀬七緒の「法医昆虫学捜査官」シリーズや「SRO」シリーズがお好きな方にはぜひ手にとっていただきたい作品です。犯罪者へのアプローチも検死&法医昆虫学とプロファイリングであり両作品を合わせたような設定になっています。

タイトルにナンバリングが付いていたないので、時系列に並べて整理しておきます。当然ながら順番に読み進めることをオススメします。

ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2014年10月)

CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2015年3月)

AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2015年8月)

LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2016年1月)

ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2016年6月)

ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2016年7月)

BACK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2016年12月)

MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子(2017年7月)

スピンオフ作品

パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子(2017年4月)

「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」について

荒唐無稽な技術を使った猟奇犯罪

タイトルの通り、猟奇犯罪を扱った警察小説ではあるのですが、「ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」が、第21回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞している通り、純粋な犯罪者対警察というだけの話ではありません。現時点では、荒唐無稽な技術を使った猟奇犯罪(それ故にホラーなのでしょう)で、どのようにしてその犯罪(現象?)が起こったのかを読者が推理する意味は全くありません。(一人の研究者が開発した彼にしか使えない独自の技術を使った犯罪であるため)

物語内でも、その現象を科学的に証明するすべがないということで、犯罪であるにも関わらず被害者については自殺として処理されることになります。犯人についてもその件では処罰されず、危険な技術(軍事利用可能な技術)の研究者としてとある施設に収監されることになります。

荒唐無稽な秘密研究施設に収監される天才科学者

その施設というのは、世界中のサイコパスやサヴァン症候群などの一般世界では管理しきれない犯罪者や天才科学者が収容され、一度入ると死ぬまで(死んでも?)出られない閉ざされ管理された秘密施設で、収容者達はそこで自由に研究を続け新たな技術を蓄積しているというもので、ここに収監されている天才たちの頭脳を借りて猟奇犯罪に立ち向かうというかなり突き抜けた設定なのです。

この施設の目的は一体何なのか?猟奇犯罪者・佐藤都夜の脳データの研究や犯罪組織との関わりなども匂わされており今後の物語の展開のキーとなることは間違いないでしょう。

主人公「藤堂比奈子」も特殊な能力を持っている

主人公の藤堂比奈子にしても、小柄ぽっちゃりの小動物系マスコット的な新人刑事というキャラクター設定(ドラマのクールで美人なサイコパス設定とかなり異なる)ながらも、話を聞きながらへたくそな絵をノートに書き込むことによって、後にその絵を見ればその時に会話した内容を一字一句間違うこと無く再現できるという特殊な能力の持ち主なのです。猟奇犯罪者ホイホイとも呼ばれている。

遺伝子技術を使った人魚まで登場

最新刊の「MIX」では、人工的に創られた人魚の遺体まで出てきます。人魚を作った博士は、国際的犯罪組織に雇われ研究を続けていたようで、その組織から切り捨てられ人魚の存在が発覚することになります。その犯罪組織は、秘密研究施設や警察内部にも潜伏している可能性もほのめかされ、いよいよ「猟奇犯罪捜査班」vs「国際的犯罪組織」に話が発展していきそうな勢いです。

感想

言うまでもなく、三連休でシリーズ一気読みした程なので、面白くないわけがありません。

異常な記憶力であったり、脳を操作して人を操るとか、遺伝子操作で人魚を作るとか、サイコパスやサヴァン症候群の天才科学者を集めた秘密研究施設とか、未知の技術を使った犯罪が描かれるなどかなり飛び抜けた物語の設定であり、猟奇犯罪者vs警察的なものではくくれない小説です。(それ故の角川ホラー文庫からの出版なのでしょう。このあたりは「バチカン奇跡調査官」と通じるところを感じます。)

個性豊かで人情味あふれるキャラクター設定が絶妙で、推理小説ではないので荒唐無稽な部分もそういう設定として理解すれば、充分におもしろい物語の展開が楽しめます。

ただ、少し残念なのは、藤堂比奈子を付け狙う佐藤都夜があっさり焼け死んだこと。今後は、対国際的犯罪組織の方向に物語が進むような雰囲気なので猟奇犯罪者個人ではなく、国際的犯罪組織の一つの駒として佐藤都夜の脳からサイコパスを受け継いだ何らかのキャラクターが登場するような展開が予想されますが、個人的にはもう一度執拗に藤堂比奈子を追う佐藤都夜のおぞましいストーリーが読みたかったですね。